変形性膝関節症

~目次~

「変形性膝関節症」ってどんな病気?

太ももの骨側とすねの骨側それぞれに関節軟骨があります。正常なときなら、この厚さ4ミリの軟骨の表面はすべすべでツルツルよく滑り、1日数千回とも言われる、ひざにかかる衝撃や摩擦を吸収してくれます。しかし、加齢や体重の増加、筋力低下などが原因で、軟骨が摩耗してすり減り、ひざの上下の骨がこすれて直接ぶつかるようになると痛みが続きます。

この状態が続くのが、「変形性膝関節症」で、関節軟骨は、一度すり減ると自然には回 復しないため、痛みを抱えながら生活している人が多いのです。

膝が痛む!膝が腫れる!

人が自由に体を動かすためには、骨・関節・筋肉・神経で構成される運動器がきちんと働くことが前提です。この運動器の働きのピークは20代と言われていて、40代を超えると老化が進み、ひざの痛みを訴える人が多くなります。

特に関節には、クッションの役割をする軟骨という部分があり、衝撃や重さを吸収してくれているのですが、これが長年体を支え続けたせいで、すり減って関節が変形してしまい痛みが出たり、腫れたりするのです。

そこでひざに痛みを感じたら、まずは「変形性膝関節症」を疑ってみましょう。 ごくごく初期症状のサインは、以下の3つです。

  • ひざが痛い
  • ひざを曲げられない(座れない、正座ができない)
  • 歩くとひざが痛い(ひざがぐらぐらする、がくがくする)

また、ひざの痛みのレベルを次のように見るといいでしょう。

  1. 数年前から、なんだかひざが痛い。動かす角度によって、痛みが増すが、風呂に入って温まると治ってしまう。
  2. 歩き出しに必ずひざが痛み、正座がつらい。朝方に痛みが強いような気がして、一日中なんとなく不安。
  3. 長い時間立っているとつらくなる。下りの階段が苦手になり、痛みが出る。少し、ひざに熱があるようだ。
  4. 歩くと必ずひざが痛くなる。しゃがむ動作やのぼり階段が苦手になり、強く痛む。ひざが明らかに腫れている
  5. 何もしていなくてもひざが痛い。歩くのも億劫になり、足に体重をかけただけで強い痛みを感じる。

このうち1.は、以下に出てくるように運動したり、生活様式を変えただけで楽になります。
2.~3.は、毎日運動を行い、リハビリに励めば痛みは軽減します。
4.~5.の場合は、病院へ行くことをお勧めします。

膝関節の構造を知ろう

ひざの構造
膝の構造
  • 大腿骨(だいたいこつ)
  • 関節軟骨(かんせつなんこつ)
  • 前十字靭帯(ぜんじゅうじじんたい)
  • 外側側副靭帯(がいそくそくふくじんたい)
  • 後十字靭帯(こうじゅうじじんたい)
  • 内側側副靭帯(ないそくそくふくじんたい)
  • 半月板(はんげつばん)
  • 腓骨(ひこつ)
  • 脛骨(けいこつ)
関節の構造
関節の構造
  • 大腿骨(だいたいこつ)
  • 関節包(かんせつほう)
  • 滑膜(かつまく)
  • 関節液(かんせつえき)
  • 関節軟骨(かんせつなんこう)
  • 半月板(はんげつばん)
  • 脛骨(けいこつ)
  • 腓骨(ひこつ)

どんな症状がでるの?

軟骨のすり減りは、とても長い時間をかけてゆっくり進行しているので、なかなか気が付けないのも事実です。しかもちょっと動き始めると、痛みが気にならなくなったりするので、気が付くのが遅れがち。

以下のような症状が出たら、「変形性膝関節症」になってしまっているかもしれません。初期のサインは見逃さずに、早く対策を取ったほうがいいので注意しましょう。

  • 歩き初めようとするときや立ち上がろうとするときに、ひざが痛む
  • 階段の上り下りのときにひざが痛む
  • ひざを曲げられない(屈伸運動ができない
  • ひざをしっかり伸ばせない
  • ひざにいつも熱がこもっている
  • ひざがこわばる(特に寝起きの時)
  • ひざが腫れている

「変形性膝関節症」になりやすいタイプ

加齢とともにかかってしまう人が多い、ひざの痛みですが、やはりかかりやすい人、かかりにくいタイプはいるようです。ではどんなタイプの人がかかりやすいのでしょうか?

50歳以上の特に女性
加齢とともに軟骨がすり減るので、やはり高齢の方に多いのは仕方ありません。なかでも50歳以上の女性が圧倒的に多く、男性は60歳の声を聞くと増え始めます。一般的に女性の患者さんは、男性の1.5倍~2倍と言われています。
女性は閉経によって、女性ホルモンのエストロゲンの分泌が減るので、その影響だと言われています。また男性に比べて、もともとの筋力が弱かったり、ヒールの高い靴を履いたり、しゃがむ動作が多いためとも言われています。
太っている人
歩いているときのひざの関節には、体重の2倍~3倍もの圧力がかかっています。ですから、やはり肥満傾向の人の方が、ひざの痛みがひどいようです。
もともとO脚の人
O脚の人は、ひざの内側が離れて開きます。そのためひざ関節の内側に、体重がかかり、変形性膝関節症にかかりやすいのです。日本人はO脚の人が多いと言われています。
ヘバーデン結節の人
へバーデン結節の人の手
これも40~50代の女性に見られる症状で、手の指の第一関節が節くれ立つ病気です。このヘバーデン結節の症状がみられる人は、変形性膝関節症が多くあらわれます

「変形性膝関節症」になる原因

変形性膝関節症の原因として、以下のようなことが考えられます。

加齢
長年使ってきたひざの関節軟骨は、徐々に摩耗が進むのは避けられません。ひざは一日で数千回も、伸びたり、縮んだりしているのですから、それが長いことであれば、なおさらです。
肥満
体重が重くなればなるほど、ひざ関節への負荷が増え、軟骨の摩耗を更に進化させ、症状の悪化を招きます。中高年になると、脂肪の燃焼効率も落ち、運動不足や過食による内臓脂肪が増え、体重が増加します。その増えた分だけ、ひざに負担がかかるのです。
筋力低下
老化が進んで、ひざ関節を支える筋力が低下すると、重みを受けるひざ関節が不安定になり、関節の内側だけに負担がかかります。そのために、一部分だけ軟骨が摩耗し、痛みや炎症が発症するのです。
O脚
O脚の人のかかとは、外側に傾いているために、左右のひざの間が広がっています。その分、ひざの内側に集中して体重がかかり、ひざの内側の関節軟骨がこすれて摩耗するのです。
長年の負荷(スポーツや仕事)
激しい運動を続けてきた方や仕事で無理な姿勢をしてきた方などは、知らず知らずのうちに半月板や靭帯を傷つけていて、それが引き金になって変形性膝関節症になることがあります。
体質(ヘバーデン結節の人)
手の関節症の一種で、人差し指から小指までの第一関節の軟骨がすり減って、節くれだってしまうものです。進行すると手作業ができなくなり、痛みも発生します。このヘバーデン結節の症状がみられる人は、変形性膝関節症が起こりやすいです。

「変形性膝関節症」の予防法

加齢による老化だからとあきらめないで! 毎日の適度な運動で、筋肉を鍛え、適正な体重を保ち、生活様式に気を付ければ、予防できるひざの痛みがあります。

動いて予防しよう

ひざの痛みは、実は動かすことによって治るのです。痛いからと動かさないと、ますますひどくなることに……。歩いたり動いたりして、筋肉を鍛えることで、ひざの痛みが軽減するのです。

また、ひざの関節を動かすと、関節の軟骨に栄養が運ばれます。関節を動かさずにいると、この関節液が浸透しなくなるのです。体を動かすことで、関節に圧力がかかって、関節軟骨から関節液がしみだしてきます。

次に圧力がかからない状態になると、運ばれた関節液が関節軟骨にしみこみます。この繰り返しによって、関節液の中の栄養が、軟骨に吸収されていくのです。

ひざの屈伸運動をすると、ひざが滑らかになる。そんなイメージです。関節軟骨は、ひざにかかる負担を吸収するクッションですから、しっかり栄養を吸収して、軟骨の摩耗を少しでも食い止めましょう。そのためには、どんどん歩いたり、動いたりすることをお勧めします。

では、どんな運動がいいのでしょうか?

ウオーキング
歩くことが、ひざ関節をそのものによい影響を与えるのはもちろんですが、全身の血行を良くするという利点も見逃せません。
ウオーキングは、有酸素運動の最たるもの。酸素を取り込みながら、ゆっくりとした動きをすることを有酸素運動と言いますが、これを習慣にすることが効果的な予防になるのです。
水中運動
水の中は、浮力があるので、比較的体重の重い人でも、ひざに負担をかけずに運動ができます。ですから、水中ウオーキングや水の中でするエアロビクス(アクアビクス)などが無理なく行えるので、お勧めです。
自転車こぎ
長時間ゆっくりと運動すると全身の血行をよくし、心肺機能を高め、脂肪を燃やし、筋肉を付けてくれます。自転車こぎの運動は、この効果が比較的早く表れる運動です。最初は負荷を軽くして自転車をこぎ始めて見て、慣れてきたら少しずつ負荷を重くかけていくのがお勧めです。
そして、心拍数に注意しながらできるだけ長くこげるようになったら、楽しくなってきます。

減量をしよう

肥満は、「変形性膝関節症」の大きな原因のひとつ。また太っていると、症状がどんどん悪化してしまいます。体重が重いということは、それだけ多くの負担がひざにかかることになります。また悪いことに、太っているから動きたくなくなり、また体重が増えてしまうという悪循環に陥る人が多いのです。

ただし、無理なダイエットをすると体力が落ちてしまったりという危険が伴いますので、運動をしながら、まずは間食をやめるところから始めてみてください。

日本では、肥満の定義を「BMI値25以上」と、内臓脂肪蓄積の指標になる「ウエスト周囲が、男性85cm以上、女性90cm以上」(いわゆるメタボ)という基準があります。BMI値が22になるような体重が、標準体重だと言われています。

BMI値の出し方

体重÷身長÷身長=BMI値

例:身長155cm、体重60kg
60÷1.5÷1.5=26.6
これがBMI値です。*身長は、m単位

肥満判定
BMI 判定
18.5以下 低体重
18.5~25未満 普通体重
25~30未満 肥満(1度)
30~35未満 肥満(2度)
35~40未満※ 肥満(3度)
40以上※ 肥満(4度)

※BMI35以上を「高肥満度」と定義

適正体重の出し方

適正体重=身長(m)×身長(m)×22

例:155cmの場合、1.55×1.55×22=52.855=約53kg
これが適正体重になります。

生活様式を変えよう

ひざを守るために、ひざを曲げたり、負担をかけるという生活とさよならしましょう。 立つ姿勢や歩き方、洋服、靴、食事やサプリメントなどにも気を配ることで、ひざの痛みはだいぶ違ってきます。

生活様式を西洋式に

まずは、畳に座る生活から、テーブルとイスの生活に変えましょう。畳で生活すると、どうしても座ったり、立ったりという動作が多いので、どうしてもひざに負担がかかります。

また寝具もやはりベッドの方が、ひざへの負担がかかりません。ふとんの上げ下ろしは、思ったよりひざに負担がかかっています。トイレももちろん腰かけられる西洋式の方がひざは楽です。

階段は手すりを使う

また階段の上り下りの際は、手すりを必ず使い、上るときには痛まない方の足から1歩目をだし、降りるときには、痛む方の足から1歩目を出しましょう

ひざによい姿勢に気を付ける

歩くときの姿勢や立つときの姿勢に気を付けることが大切です。

両足を広げて、ひざを曲げ、つま先に体重をかけて立った状態は、ひざに負担がかかりません。休めの姿勢で、体重をどちらかに7対3くらいの割合でかけている状態もよいでしょう。

ひざによい姿勢の例
  • あごをひく
  • 視線はまっすぐ
  • 胸は軽くそらす
  • おなかの筋肉をひきしめる
  • 肩の力を抜き、背筋を伸ばす
  • ひざは20~30度曲げる
  • おしりをひきしめる
  • 足を20cm~30cmくらい開いて立つ
  • つま先に体重をかける

膝の屈伸が楽な服を着る

ぴったりしたスラックスやスカートではなく、ひざが楽に曲がるような洋服を選びましょう。ウエストや足の周りにゆとりがあって、ひざを曲げた時に服でつっぱったりしない服選びをしてください。

足にあった靴を履く

歩くことで地面の衝撃をじかにひざに受けないように、靴底は、1cm以上のものを選びましょう。つま先に体重がかかるように、かかとに3cm以下のかかとが付いている方がいいでしょう。かかとのラインがあっていて、全体を包むような感じでサポートしてくれるくつが望ましいのです。

靴幅が足に合っていて、足の甲の部分までしっかり覆い、ひもで固定する運動靴のようなものがベストです。土踏まずはあっていて、つま先には少しゆとりがあるほうがよいでしょう。

食事やサプリメント

筋肉をつけるために栄養のバランスがとれた食事をするのはもちろん、足りない成分はサプリメントで補いましょう。食事はその質や量、食べ方などのバランスを考えます。筋肉の量が落ちないように考えながら、良質のたんぱく質と野菜を取ることを意識してください。

また、グルコサミンやコンドロイチンは、関節軟骨を作っている成分です。アメリカの臨床研究で、初期から中期の「変形性膝関節症」で、関節軟骨の摩耗がまだそれほど進行していない人に効果的なことがわかっています。これらを飲んだことで痛みが軽くなったという患者さんの声は多いのも事実です。

できるだけ早くから、症状を悪化させないために、まずはサプリメントなどで補うと考え飲むとよいでしょう。

「変形性膝関節症」の進み方

「変形性膝関節症」は、年齢と共に少しずつ症状が進行します。その進行具合は以下の特徴でわかります。

初期
朝、布団から起き上がるときにひざがこわばっている。歩こうとすると、ほんのわずかに痛みを感じるが、すぐになくなるので気にしなくなる。
このときすでに関節軟骨の劣化がスタートしています。軟骨の表面がすこしずつこすられて減っているので、ごくたまにひざが腫れることがあります。
中期
はっきりとしたひざの痛みを意識するようになります。痛みが消えるまでの時間が長くなり、ひざがこすれるような違和感を自覚します。
関節軟骨の摩耗が進んでいる状態です。これを修復しようとして、骨棘(こっきょく)と呼ばれる突起のようなものが作られて、ますます痛み、ひざの腫れがわかります。
末期
ちょっとの動きにも痛みが伴い、歩行が困難になり、階段の上り下りが苦痛になります。 立ったり座ったりという日常動作にも痛みを伴います。ひざの腫れが見た目にもはっきりし、O脚の度合いが増したように感じられます。
関節軟骨がほとんどなくなってしまった状態です。骨同士がぶつかるので、非常に腫れて、常に痛い状態です。

診断の流れ

ひざの痛みが進行し、医者に診てもらう場合、訪れるべきは整形外科です。

医師は、問診 ⇒ 視診 ⇒ 触診 ⇒ X線撮影 ⇒ 関節液検査

という流れで診察を行って、ひざの症状が今どんな具合なのかを判断します。それに準じて、いろいろな検査をして、治療の方針を決めていきます。

問診
ひざの痛みについて、以下のようなことが聞かれますので、あらかじめメモをしていくとよいでしょう。特に医者に伝えたい大事なことは、ひざが痛くなるのに思い当たる原因や今までしていた自己流の処置や飲んだり、貼ったりした薬などです。

自分の症状を正確に医師に理解してもらうためにも、きちんと自分の情報を整理して持参することをおすすめします。

  • ひざのどこが痛みますか? 具体的にいくつでも教えてください。
  • いつごろから痛み出しましたか?
  • どんなときに痛みますか?
  • その痛みは、急におこりましたか?徐々に痛みが大きくなりましたか?
  • どんな時に、どんな程度の頻度で、どんな感じで痛みますか?
    (ズキズキ、ひりひり、ちくちく、しびれる、電気が走る、その他)
  • ひざの曲げ伸ばしはできますか?
  • ひざを痛めたことはありますか?
  • 何かスポーツをしていましたか?
  • ひざの治療を受けたことはありますか?
  • 何か今、薬を飲んだり、湿布をしていますか?
視診
ひざの腫れ具合や、皮膚の色の変化、足がO脚か、X脚か、ひざの曲げ伸ばしの様子などを見ます。
触診
関節を押した時の痛みや腫れ具合、筋肉の変形や萎縮、関節のぐらつきなどをチェックします。
X線撮影
ひざが腫れていたり、熱を持っている場合は、注射器で関節液を採取して、その量や色、濁り、白血球の数値や、含まれる成分などを検査します。その結果によっては、慢性関節リウマチや偽痛風といった違う疾患の場合もあるのです。
関節液検査
ひざが腫れていたり、熱を持っている場合は、注射器で関節液を採取して、その量や色、濁り、白血球の数値や、含まれる成分などを検査します。その結果によっては、慢性関節リウマチや偽痛風といった違う疾患の場合もあるのです。

よく似た病気

診断の結果によっては、「変形性膝関節症」以外の病気の場合もあります。その場合は、血液検査やリウマチ因子検査、MRI検査、関節鏡検査、関節造影検査、CT検査などが行われます。

よく間違われる症状をあげておきます。

慢性関節リウマチ
朝、ひざのこわばりが続く。免疫異常により、炎症が起きるので、ひざのみの痛みではありません。
痛風
中高年の男性に多いが、足の親指が突然痛む。血中の尿酸が増え、関節に沈着することから痛むので間違いやすいのです。
偽痛風(関節軟骨石灰化症)
高齢者に多いが、ひざを動かすと激しく痛み、発熱してしまう。関節液や半月板、軟骨などにカルシウムの結晶がたまって痛みを引き起こします。
半月板損傷
けがが原因で痛みを引き起こす。ひざが不安定になり、関節の可動域が狭まり、ガクンとなる。けがが原因でひざの半月板やじん帯の一部が裂けたり、破けたりして起きたりします。
大腿骨内側顆骨壊死(だいたいこつないそくかこつえし)
60歳以上の女性に起きやすいのですが、夜間などに急にひざや股関節が痛む。ステロイド薬やアルコールの影響で血流が悪くなり、組織が壊死したことで痛みが起きてきます。
結核性膝関節炎
膝が痛い、こわばる、腫れる、熱をもつ、水が溜まるといった症状が一般的で、身体のだるさや食欲不振などの症状が見られることもあります。肺炎を患ったことがある、もしくは過去に患っていた、また結核患者と最近接触した場合は注意が必要です。

治療法

「変形性膝関節症」と診断されたら取り組むべき治療法は、保存療法です。それでも痛みが長く続き改善されない場合は、最終手段として手術という選択もあります。

基本的には、下記のような薬物療法を1~2週間続け、痛みが軽くなった後は、週1回受診して、ひざの負担を減らすために関節周辺や太ももなどの筋肉を鍛える運動療法を続け、 歩き方の改善やバランス感覚を鍛える訓練をします。それを続けてもどうしても改善されなければ手術ということになります。

保存療法

保存療法とは、運動療法、装具療法、物理療法、薬物療法があり、手術による切開を行わずに治療する方法です。歩き方の補正、筋肉の付け方、向精神薬を使って精神疾患の症状を改善するなど、症状の根本から改善するのが目的です。

運動療法

ひざの周囲の筋肉を鍛えて関節を保護し、負担を和らげる方法です。ひざの動く範囲を保ちながら、ひざが動くようにしていきます。

どんなに軽度の患者さんでも、どんなに重度な「変形性膝関節症」でも、常に運動療法を取り入れるという方針は変わりません。たとえ、手術で人工関節になったとしても運度療法は欠かせないのです。

膝痛改善エクササイズ

もも上げ体操
もも上げ体操のやり方
まず右のももをひざの高さまで上げます。それを10回繰り返したら、今度は左のももをあげます。ふらつくようなら、壁につかまっても構いません。続けて50回くらいはできるようになりましょう。まずはこの運動からスタートです!
足上げ体操
仰向けに寝て、足をまっすぐに延ばしたまま、片足ずつ、床から足を上げます。上げる高さは10cm~20cmほどですが、あげたらその場で止めたまま10数えてください。終わったら、足を下ろしてというのを繰り返して10回。左右それぞれに行います。
足上げ体操のやり方
つま先はのばしたままでもいいですが、指を足の方に引き寄せるようにすると、股関節とふとももの前の筋肉も一緒に鍛えられます。慣れてきたら、足首に重石として、小さな枕や座布団などを置くと、荷重のぶんだけ筋肉が鍛えられるのでおすすめです。
バタ足体操
バタ足体操のやり方
お風呂の中で行える体操です。湯ぶねに浸って両手はカラダの横に置き支えます。浮力を利用して左右の足を浮かし、その場でバタバタと30回バタ足をします。水中で運動することで、関節の負荷が軽減されるだけでなく、水の抵抗があるので運動負荷がかかり、とても効率的に運動することができます。

薬物療法

痛み止めの薬の服用(内服薬)
消炎鎮痛剤で痛みを和らげます。症状がひどい場合は、内服薬でも即効性のある坐薬を用いる場合もあります。
湿布や塗り薬(外用薬)
非ステロイド系抗炎症薬の外用薬。炎症を抑え、痛みを和らげ、熱を鎮めます。外用薬は直接、ひざから吸収されるので、効率よく効きます。
関節内注射
ヒアルロン酸の関節内注射が一般的ですが、関節炎が続く場合は、ステロイド剤の注射もします。ひざに水がたまっている患者さんなどには症状の改善がみられると言います。週に1回×5回が1タームになります。

装具療法

ひざを保護するためのサポーターや足底板を着けて、痛みを緩和する方法があります。

膝を保護するためのサポーター
サポーター
ひざの安定性を高めると同時に保温性もありますが、直接のひざの治療にはなりません。
足底板
くつ底に付けたり、中敷きとして入れたり、スリッパのように履いたりと様々な形状のものがあります。足の外側を高くし、ひざの内側にかかっていた体重の負担を均等にすることで痛みを和らげます。できるだけ、すねがまっすぐになるように矯正するのが目的ですので、あまりにO脚が進んでいる患者さんには向いていません。
機能的ひざ装具
ひざに直接装着して、ひざの変形を矯正したり、安定感を高めます。サイズが合わないと血行障害になる恐れがありますので、きちんと専門医の診察を受けてから義肢装具士に見てもらってつけたほうがいいでしょう。

手術療法

運動療法を続けても改善せず、薬物療法や装具療法を2~3か月続けてもひざの痛みがひどい場合には、手術という方法も考えられます。手術療法は、その患者さんの病気の状態や年齢や生活環境などが深くかかわりますので、よく担当医と相談してから決めてください。

関節鏡視下手術(かんせつきょうしかしゅじゅつ)

ひざの皮膚を2か所、数ミリ切開して、関節鏡という関節内専用の内視鏡をひざの悪い部分に入れ、軟骨の破片を切除したり、軟骨の表面をなめらかにします。手術後の痛みも少なく、傷跡も小さくて済みます。

手術は1時間ほどで終わり、3日~7日ほどの入院が必要です。翌日から装具をつけたリハビリが始まります。手術でよくなったからといって、運動して筋肉をつけないと、再発します。

関節の変形が進んでしまっている方は、この手術は受けられません。ひざの痛みが軽度~中程度までの人の場合に行われる手術なので、より症状の軽い人のほうが手術の効果が上がるのです。

高位脛骨骨切り術(こういけいこつこつきりしゅじゅつ)

ひざ関節の下にあるすねの一部を切り取って、その傾斜を変えて、まっすぐにすることで、O脚をX脚に矯正する手術です。

こうすることでひざの内側に偏っていたひざへの負荷を軽減し、関節にかかる力を均等にします。内側の関節軟骨がすり減って痛みがあり、外側部分が正常な場合に有効です。

ひざの組織は温存できるので、自分のひざ関節の機能はそのまま生かせますが、骨がつくまでに2カ月ほどかかり、回復までには半年を要します。その間リハビリに励めば、正座もできるようになりますが、筋肉が衰えないように運動しましょう。

手術には、下記の2種類の方法があります。

クローズドウエッジ法
すねの一部を外側からくさびの形に切り取ります。
オープンウエッジ法
すねの一部を内側から切り取って、人工骨を入れます。O脚の程度が軽い人のみ有効です。

これらの手術は、あまり高齢でないことが基本になりますが、受けられるのは一度きりと考えたほうがいいでしょう。

人工膝関節置換術

「変形性膝関節症」が進行してしまい、改善されない場合には、人工膝関節置換術という手術が行われる場合があります。これは、壊れてしまった関節軟骨を切り取って、金属やセラミック、ポリエチレンなどでできた人工膝関節に置き換えます。

手術は1~2時間で終わり、3~5週間ほど入院し、1~3週間で歩くことができます。正座は人工関節への負担が大きいため、極力避けるようにしましょう。

ひざの痛みはなくなりますが、激しい運動はできません。人工膝関節の耐用年数は約20年といわれており、再手術の必要がないように、65歳以上の方にすすめられているようです。

手術には、下記の2種類の方法があります。

TKA(全人工膝関節置換術)
この手術の9割を占めているのが、この方法です。太ももとすねの骨、ひざのお皿の骨の表面の軟骨とじん帯を切り取り、ひざ全体に人工関節を入れます。
UKA(人工膝関節単顆置換術)
部分的に人工関節を入れる新しい手術です。TKAよりも自分の骨やじん帯を温存できるので、手術した後にひざの可動域が広いとされています。ただ、ひざの変形が大きい人には施術できません。

さいごに

「変形性膝関節症」は、発症してしまったら一生付き合うことになる病気です。運動や生活様式を変え、体重を増やさない努力は、手術をしてもしなくても続けなければなりません。

手術後すぐには、動くのが怖かったり、痛みの記憶から運動を避けていると、筋力が衰えて、また痛みをぶりかえすことになります。運動しないと体重も増え、またひざへの負担も大きくなるのです。

まずは、ゆっくり動くことから始めて、できることを増やしていきながら、毎日体を動かしましょう。